『みちのく3000q・毎日一座・1週間の東北登山』

★第2日目(8月7日・土曜日) 『八甲田山1584b』 (青森県)
ルート:八甲田ロープウエイ→田茂萢岳→赤倉岳→井戸岳→大岳→仙人岱→地獄湯の沢→酸ケ湯温泉(テント泊)

八甲田山は青森市の南側にそびえる火山群の総称で、その最高峰は八甲田大岳です。国土地理院の地形図には大岳とだけ表記されているようです。標高は1,584m。
新田次郎著 『八甲田山死の彷徨』 を原作とした映画「八甲田山 」での一節で「天は我を見捨てたかー」は有名なところ。
明治35年に青森の歩兵第五連隊が雪中行軍の演習中に記録的な寒波に遭遇し、210名中199名が遭難した事件(八甲田雪中行軍遭難事件)が発生、それを基に表現されている。この事件で全国に知れ渡った八甲田の山名。今なお、陸上自衛隊青森駐屯地に駐屯する第5普通科連隊も、毎年、厳冬期に、八甲田山系での冬季雪中戦技演習を行なっているところである。
八甲田山の山麓にあるロープウエイの駅に着いたのは6時だった。数台の車があるものの静寂に包まれている。近くにあるホテルもまだ眠りの中のように感じられる。
「始発は9時。ちょっと早すぎたのかなあ。」
八甲田山は奥羽山脈の最北端にあり青森県の、ほぼ中央にあるため、冬は西風で多くの積雪があり、夏は東風で湿った雲が山腹を取り囲むそうです。1584mと標高も高くない中で、峰から峰へと立ち、花好きのひとには、たまらない魅力の山なのです。
計画途中で山菜取りの登山者が有毒ガスの発生で死亡するという痛ましい事故を知り、少し躊躇したものの「解除」の声を聞き、憧れの八甲田登山を実現することができました。
時刻 ポイント
9:00 ロープウエイ山頂駅
9:20 湿原展望台
9:30 田茂萢岳
10:10 赤倉山外輪
10:20 赤倉山山頂
10:30 井戸岳
11:10 八甲田大岳到着
11:45 八甲田大岳下山開始
11:50 鏡池
12:30 仙人岱
12:45 地獄湯の沢
13:45 酸ケ湯温泉到着
ロープウエイ山頂駅広場にはツアーのパーティや同好会のパーティが所狭しとミーティングを行なっています。見るからに山に入るスタイルでは無なさそうなメンバー多数。でも此処には周遊路がありパンプスでも楽しめるようにしてあるから大丈夫でしょう。
ツアーのパーティを尻目に遊歩道を田茂萢岳に向かいます。遊歩道はアオモリトドマツの林の中を縫うように進んでいきます。田茂萢湿原展望台から全容を目にしたいのですが上部が濃霧のため湿原部しか見えません。ぐるっと湿原を回って田茂萢岳の頂上らしきところに出たときには一面濃霧の中です。
今朝ほどはよく晴れていたのに、もう雲が上がってきたのでしょうか。
ここから赤倉岳を目指します。毛無岱・酸ケ湯温泉への分岐を過ぎると、ササやハクサンシャクナゲ、ナナカマドなどの植物を掻き分けるように進んでいきます。ザックが小枝に引っかかり、木の根に足を取られることもたびたびです。この植生帯を過ぎるととたんに樹木が低くなり横風に煽られます。急激に高度を稼いで行きます。少々息を切らしながら上り詰めるとそこは赤倉岳の火口輪です。残念ながらその全容は濃霧に閉ざされていますが時折一部分だけ見せてくれます。かなり険しそうです。風もきついので多くの時間休むことなく次へ進みます。ここから5分ほどのところに赤倉岳の頂上標識がありました。
ゆるいアップダウンを数回繰り返すと井戸岳です。ここでルートは左に折れます。まっすぐ行くと噴火口の跡に真っ逆さまです。幸か不幸か濃霧で何も見えません。
八甲田山ロープウエイ 始発なのに上には人が 山頂駅付近は登山者で… 山頂駅前にて
コンクリートの周遊路を行きます やがて自然路に
井戸岳の火口輪を左に巻くように進んでいくころ、瞬間的に濃霧が切れ爆裂火口が姿を現しました。すごい迫力です。カメラを出す時間ももどかしいほどの短い間でしたが声に上げるほどすばらしいものでした。
火口輪を過ぎると道は急激に下っていきます。大岳避難小屋のある分岐点まで下がります。数人の男性が登山道の整備をしてくれていました。この方たちのおかげで安全かつ楽に歩けていることを忘れてはいけません。
山行中、JONによく言われます、「此処に梯子が架かっていなかったらどうする?」「もし此処に鎖が無かっても登れるか?」「山に行くならどんな状態でも登れるように力を付けなあかん」登山道が荒れているだけで文句を言う人も多いようですが、自然と対峙する以上技術の向上は大切です。
早朝より少々やかましい東京の同好会のメンバー8名が大岳避難小屋にザックをデポして大岳に登るべく私たちの後に付きました。全員空身のようです。ここでくだらない意地を張って「空身の登山者に抜かれてなるものか」必死でがんばります。先行しているJONの背中もそう言っているようです。後ろからは相変わらず8人パーティのおじ様おば様の大きな声のおしゃべりが聞こえてきます。30分ほど頑張れば八甲田大岳の頂上です。この頃には風も穏やかになり、歩きやすくなってはいるものの、急勾配の道を踏んでいくのは体にこたえましたが、どうにか山頂に到着です。
頑張った。山頂を吹き抜けていく風は肌寒い感じがしましたが気持ちよかったです。
井戸岳を過ぎると急激に下っていきます
大岳避難小屋 八甲田大岳山頂にて
八甲田大岳山頂にて
食事をしたり写真を撮ったり八甲田を十分楽しんで仙人岱に向けて下山開始です。この頃から少しずつ晴れ間が広がってきました。鏡沼を過ぎる頃には、八甲田小岳や酸ケ湯温泉などきれいに見えるようになってきました。晴れた。登りと違って風も無く南八甲田の峰峰を楽しみながらの下山です。仙人岱避難小屋を見ながら数組の家族が楽しんでいる仙人岱を通り、だらだらと地獄湯ノ沢沿いに下っていくと酸ケ湯温泉登山口に到着です。
ここから酸ケ湯温泉バス停に行き、青森駅行きのJRバスで、八甲田ロープウエイ駅まで車の回収に行き、再び戻って酸ケ湯温泉キャンプ場でテント泊をすることになりました。
準備ができたところで、やっぱり温泉に入らなくっちゃあと言う事になり、歩いて10分ほどの、かの有名な酸ケ湯温泉で汗を流すことにしました。ここは混浴で、お湯の色は白骨温泉と同じく、白く不透明で私のヌードをのぞかれる心配はありません。しかし入り口のシステムの説明が不十分で混浴場所へは行けず、内湯に浸かって風呂から出る羽目となりました。(よかった?かな)
その後売店で買い物を済ませ、キャンプ場で夕食の支度に取りかかりました。ついでに次の日のお昼のおにぎりも作り、満天の星をながめながら寝ることにしました。翌朝は早くに岩木山に向けて走ります。
八甲田小岳 酸ケ湯温泉を望む
仙人岱避難小屋 酸ケ湯温泉登山口に到着

今夜のお宿は酸ケ湯温泉キャンプ場です。
テント場は静か 炊事棟はきれいです 豪華な夕食で 静かに世はふけていきました

文:美智子姫 記