2016
●第3日目 8月19日(金)晴れ 塩見岳 (3047m)
熊ノ平小屋 04:50 ⇒安倍荒倉岳 05:38 ⇒竜尾見晴 06:37⇒キャンプ場跡地09:04⇒北俣岳分岐11:04⇒塩見岳(東峰・西峰)12:03-12:23⇒
塩見小屋13:30-14:00⇒本谷山16:20⇒コル16:45⇒山伏峠小屋17:40 三伏小屋テント泊
山頂は100m足らずの距離を隔てて西峰(3,047 m)と東峰(3,052 m)に分かれています。三角点は低い方の西峰に設置されているため西峰が塩見岳の標高とされています。仙丈ヶ岳から続く長大な仙塩尾根の南端に位置する。山頂南側の三伏峠と本谷山南斜面、北側の北荒川岳周辺と熊の平周辺は高山植物の群生地となっています。鉄の兜(かぶと)にも似たドーム形の独特な山容で、遠方から眺めると独立峰のようなその山容が目立つ。山名の由来は、山頂から海が見えるからという説や山麓に塩の産地があるからという説がある。山麓の大鹿村には、鹿塩(かしお)という集落と小渋川の支流の鹿塩川と塩川という地名があり鹿塩温泉では天然塩水が湧き出し、明治時代には製塩施設が設置され各地に塩が出荷されていた。
目覚めの一声は「雷と雨が怖くて寝れなかったわ」「嘘つけ~隣のテントの兄ちゃんがびっくりするほど大きなイビキだったと言ってたぞ」昨夜の雨がうその様に止み、雨に濡れたテントがより重く肩にのしかかります。この日のコースは塩見小屋を越え更に三伏峠小屋まで進まなければなりません。この荷物だと全コース12時間はかかると思われます。このあたり一帯はテント禁止地域となっており最悪到着しない場合はツエルトを被りビバーグ覚悟で出発することとなりました。疲労は積み重なるように体内に残っています。百座目の塩見岳目指して出発です。
 朝の月  振り返ると三峰岳、間ノ岳の山容が朝空に浮かぶ
 熊ノ平から最初のピークは安倍荒倉岳です  緩やかな傾斜を繰り返しながら竜尾見晴へ向かう
 途中に現れた安倍荒倉岳の看板に山頂を踏もうとリュックを置き空身で登って行きました。すると下の方で物凄い音がしました。「熊がでたかっ?」音の方に目をやると何と姫のリュックがゴロゴロと転んで落ちて行ってるではありませんか・・・またやっちまいましたね。(笑) 
 竜尾見晴の岩尾根歩きは楽しいですヨ
 竜尾見晴を行く …尾根がゴツゴツとした岩石で 竜の背のように形成されている
ななかまど コバイケソウの群落地
 新蛇抜山を過ぎるころ行く手の山のハイマツ帯の中に真っすぐ延び上がるルートが見えます。あれを直登するの?」あれを越えると北荒川岳でしょうか
1時間も歩くと砂漠の様な広大な砂山が出現しました。
北荒川岳へのきつーい登り…ここを抜ければ山頂です
北荒川岳山頂
  北荒川岳の旧テント場と管理人小屋です 
雪投沢の源頭を行く 北俣岳分岐 塩見岳東峰 への登り
塩見岳東峰   塩見岳西峰 
「もうそろそろ小さな小屋がみえるはずなんだけどなぁ」ジョンが地図を片手につぶやきます。「あったよー」キャンプ場跡地のりっぱな看板と小さな小屋を発見しました。目印になるものがみえたら居場所がわかり安心できます。しかしここから塩見岳の道のりはそう容易い道のりではありませんでした。互いに無口になり疲れが出てきたことが感じ取れます。必要最小限の会話をしながら歩いていると、前にそそり立つ塩見岳の容姿が見えてきました。「きっとあれやで!」「そやなぁ。もう出てきてもおかしくないなぁ」前から来た登山者に塩見岳と思われる山頂を指差して聞くと「いや、あれは違いますよ。あの奥の山です」と言われガッカリしました。しかし前に進まなければ到着しないのです。急なザレ場の九十九折れの登りは背中の荷物が邪魔をして足がずり落ちそうになりました。何度何度も立ったまま休憩を取り一歩、一歩また一歩進みました。頂上らしきところに登山者のシルエットを見つけました。「もうすぐ頂上や~」そう思うと足取りも、やや軽くなった気がします。塩見岳山頂は西峰と東峰に分かれており山頂に着くと「100」と書いた記念のウチワを高々と挙げました。
「シャッター押しましょうか?」と声をかけていただきましたがカメラのバッテリー切れており丁重にお断りし、その後バッテリー交換。誰もいなくなってから動画撮影を楽しみました。やっとゴールしたのです。あと一息・・・双耳峰の残りの頂上目指して足早に進みます。心は高鳴っています。ここでジョンが密かに用意してくれた横断幕を広げました。それをみていた登山者がシャッターを押してくれました。今まで霧の中だった塩見岳が一瞬スカイブルーの空を映し出してくれました。「やっと来たね。ありがとう~!」そう叫びました。相棒に感謝!岳友達に感謝!家族に感謝!地球上のみんなに感謝です。山頂での感動を終え塩見小屋に向けて出発しました。かなり厳しい岩場の連続なのですが鎖は1本も設置しておらず自分の力で登ったり下ったりでとても清々しく感じました。本来の岩場はこうあるべきではないかと思います。あまりに過保護に鎖を設置すれば安易に登って来れるため事故も多発するのではないかと思ったりしました。とにかく剥がれかけた岩場は剥がれかけたまんま。「落石注意」の看板はあるものの緊張の連続でした。
塩見岳東壁 天狗岩
 塩見小屋    本谷山
遥か彼方に塩見小屋の赤い屋根が見えてきました。見えてきたもののなかなか遠いです。やっとの思いで到着しました。カレーのよい匂いがしました。注文しようとしたら「売り切れです」とのこと。仕方が無いのでカップラーメンと、売れ残ったと言う弁当1個を購入し小屋の中で遅めの昼食を食べました。塩見小屋は完全予約制です。予約がないと宿泊できません。どうしてもと言う人には3時間ほど歩いた先の三伏小屋を紹介していました。トイレは珍しい簡易トイレで簡易パックを200円で購入し汚物は自分で始末するシステムです。ジョンがお試しウンチをしましたので感想を知りたい方は直接聞いて下さい(笑)塩見小屋を出ると疲れもピークに至り登り坂が出るとスピードが低下するようになりました。 
のぞき岩 三伏山 三伏山から見た三伏峠小屋
 小河内岳方面の稜線  三伏峠小屋テントサイト
鳥倉登山口から塩見小屋に向かう団体登山者たちが登ってきます。山の管理者と思われる3人が私達を呼び止めました。「どこまで行かれますか?」「三伏峠までです」おもむろに時計を覗き「気を付けて行って下さいね」と言って登っていかれました。きっと大きな荷物背負って、このままだと明るいうちに小屋に到着するかどうかと案じたのだと思います。私達もビバーグ覚悟だったのですがあの方達がもし下山してきたら「ほら見たことか!」と言われそうで頑張るしかありませんでした。次なる目印は「本谷山」なのですがなかなか到着しません。「一体どこまで歩けと言うのか~!」と言うぐらい歩き続けました。信州の「高ポッチ」に済むと言う青年と出会い小屋までの距離を聞くと「もう一山超えたらすぐですよ」まだ一山あると言う。なるほど三伏山を越せば小屋の屋根が見えテントが所せましと張ってあるのが目に入りました。30分ほどで小屋に到着。若者でテント場は賑わっています。この夜は強い風の音に悩まされましたが雨は降っていませんでした。翌日の予定に余裕があるため初めてゆっくりくつろげた気がします。
文:美智子姫