夏山・甲斐駒ケ岳、仙丈ケ岳に向けて
夏山登山トレーニングC宝殿から高御位山〜桶居山〜御着  体力作りと傷病者搬送の講習 2009.06.14

  JR宝殿駅9時集合で、夏山トレーニングCが実施されました。
今回は前回の逆コースの設定で宝殿の町外れに有る石切り場からあがります。夏日で暑さが予想されるため水も多めに携帯するようにリーダーからアドバイスがありました。行動食も夏山登山の参考にしてもらうため、キューリ、りんご、オレンジと工夫の数々を皆さんに見てもらいました。今日初めて参加の人がいるので皆さんに紹介して仲良く出発することにしました。山道に入るまではジョンが先導しますが山道に入ると私がトップを歩くことになりました。「距離が長いので、とにかく、ゆっくり」と自分に言い聞かせ、時々、後ろを振り返り列がとぎれていないかを確認します。とぎれている時は少しゆっくり目で歩き調整します。
 
今日も「孤独のトップ」の始まりです。(緊張するなぁ)。
ジョンは言います
 「これぐらいのリードが出来なくて何がクライマーやねん。これぐらいでけへんと、バットレスもゴジラの背も無い。気合を入れてやれ。今までと同じ速度で問題ないが、今日は暑そうやから今まで以上に後ろに注意して。しんどい人もでるやろうけど、体を苛めに来てるんやから、皆も頑張ってついて来るやろ。あかんかったら言っていつでも俺が代わるから」 励ましか、こき下ろしかわからんけど、とにかく檄が飛んできます。

宝殿の住宅地を過ぎる頃目前に岩山が見えてきます。あの裾が今日のトレーニングの始まりです。
北山分岐、神吉分岐、西山分岐を通り、高御位山にさしかかった時、体調不良を訴える人が出ました。昨年末に手術をした人です。体力不足からくるバテのようでした。水分は充分に摂っているようなので3kgほど荷物を軽くして速度をおとして山行してもらうことにしました。
近くにいた人達にリュックの中身を分担してもらいリュックの荷重を少なくすると何とか軌道修正。
続いてもう一人体調不良の人がでました。暑さがアクシデントを引き起こしている様です。出発前にアミノバイタルを服用されたようだったが再度服用してもらう。
ザックを預かりゆっくりと上がってもらう。山頂に着いたころにはペースを取り戻されたようでした。バテた人の救護方法も実践で学ぶことができました。
高御位山の従走路のトレーニングはアップダウンの連続のため体の使い方が悪いとバテに繋がります。そのためにトレーニングをしているのですから。バテを見せないように一生懸命歩いている方もいらっしゃいますが、息遣い、足の上げ方、姿勢の崩れ方などからリーダーが判断してその都度速度をコントロールしています。
 「この速度で早くないですか」
JON  「大丈夫、早くない。半分以上の人はついて歩いてる、姿勢も乱れてない。早くは無い大丈夫。この速度を保っていたら回復する人は次第にペースが戻ってくるバテている人は遅くするとだんだん遅れてくるから頑張ってもらおう。これ以上遅くすると、今大丈夫な人がペースを狂わせて遅くなり全員がダメになってしまう。今のリズムを刻んで」
リーダーの言うとおり同じ速度を保ちながら高御位山の山頂を目指しました。
 
    全員揃って、高御位山頂上にある神社で昼食をとりました。昼食を食べると午前中体調不良の人達も元気に午後の出発ができそうです。頂上の広場を利用してお昼の歌「蛍」「夏は来ぬ」を歌い今回のトレーニングテーマである「レスキュー傷病者の搬送」を実際に簡易担架を使ってヘリコプターの救助ポイントまで搬送することにしました。担架に乗る人はいままで「体重の軽い人」と決まっていたのですが、必ずしも軽い人が搬送されるとは限りません。そこで52sの私が担架の上に乗りました。「重っ〜」誰がそうつぶやいた様に聞こえましたよ。
確かに言いましたよー。今回は近場の想定でしたのでカラビナ、シュリンゲを使っていませんでした。次回はカラビナシュリンゲを使ってやってみましょう。
重かったし、手が痛かった。指示が悪くてすみません。
他の見学者もいて、なかなか登山途中にこのような講習をしてくれるリーダーはいないと思います。初めて参加の人も「やまたび倶楽部なら安心して参加させてもらえる」そう思ったに違いありません。それにしてもリーダーのリュックの中には共同装備が沢山入っているのに、いつもながら驚きました。
でも本当に傷病者が出たら大変です。
ウオーキング協会に所属していたときは毎回のように手当てにあたっていました。
熱中症、転倒による裂傷、捻挫、足の攣り、バテ、二日酔い、数えあげればキリがありません。山行中自分がどんな状態にあるかを確認しながら歩いてください。
山では絶対に傷病者を出さないことです。
午後からもアップダウンが続き鷹ノ巣山のそばを通り、下の射撃場からはクレー射撃の音がして、玉は届くはずがないのですが何となく不気味で早くこの音から逃げ出したいと言う気持ちになりました。
傷病者をレスキューポイントまで背負い搬送  緊急時ビバーグをしたり救助を待つときにツエルトを使います。
   
途中の広場を利用して、見通しの良いヘリコプター救助場所まで負傷者背負う訓練もしました。参加者はロープで負傷者を背負った人を前から引っ張ります。みんなの歩調が合わなければうまくいきません。背負われている方も背負う方も必死です。よその人が通過したなら「講習中」とは思わないほど迫力がありました。
 
桶居山を目前にして「リタイヤ」の申し出がありましたが、リタイヤのコースもかなり厳しく、何とか最後まで同行することに納得してもらいました。長くて、暑くて、つらい道のりを経てまもなく深志野登山口というところで、大粒の雨が降ってきましたが誰も合羽を着る様子もなく(汗で濡れてるし、今更合羽なんてと言う気持ちもありました)深志野登山口に出た時には、幸運にも雨は止んでいました。
 
出発前にみなさんに見てもらった行動食「多すぎる」と思ったかも知れませんが、決して多くはありませんでした。休憩毎に上手に食べて、体力の維持に役立ちました。残ったのはバナナだけでした。そのバナナも列車の中で美味しく頂きました。
 
17時30分JR御着駅にゴールです。みんなよく頑張りました。バテたからと自信喪失はしないでください。そのためのトレーニングなのですからね。甲斐駒も仙丈岳も今日ほどきつくありません。アルプスというムードと涼しい気温が山頂を踏む感動を約束してくれること間違いなしです。参加することに意義があるのです。
 
 「ごちゃくにとうちやく〜」
 

 
文:美智子姫 写真協力:鹿島秀元

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